e楽器屋.comが取材した楽器店・インタビュー特集(全36回・2015年3月〜2019年12月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

楽器屋探索ディープレポート Vol.17

ノナカ ダブルリードギャラリー

ノナカ・ダブルリードギャラリーについて
渋谷道玄坂にある世界最大級のダブルリード楽器専門店。半世紀以上にわたり世界の名器を輸入している「野中貿易」直営ショールーム「アクタス」4Fにあり、オーボエ、ファゴットなどダブルリードの木管楽器を専門に、楽器本体からリード、アクセサリー類まで、実際に手にとって見ることができる世界でも数少ないお店。6F「ノナカアンナホール」にてマスタークラスやミニコンサート、リードメイキング講座なども開催。
ノナカ・ダブルリードギャラリー店舗情報
ノナカ・ダブルリードギャラリー公式サイト
渋谷区道玄坂1-15-9 野中貿易ビル4F
お問い合わせ:03-5458-1541
営業時間:平日 11:00〜19:00、土曜 10:30〜19:00、日曜・祝日10:30〜17:30

楽器店の中の人に話を聞いてみた〜 ノナカ・ダブルリードギャラリー 編

このコーナーは、楽器店でミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューしてお話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

ノナカ・ダブルリードギャラリー店長 山田忠男氏

野中貿易セルマー・ジャパンに続いて、ノナカ・ダブルリードギャラリー店長、山田さんにお話をお伺いします。数少ないダブルリード専門店となります。お店の紹介をしていただけますでしょうか。

本社の野中貿易が管楽器をすべて取り扱う「アクタス」という店舗を渋谷公園通りで運営していて、22年前、1994年にオーボエ・ファゴット(バスーン)を専門に取り扱う部門として、当店「ノナカ・ダブルリードギャラリー」として独立しました。当店が独立した後に、サクソフォン、クラリネット、フルートは「セルマー・ジャパン」、金管楽器は「ブラスプロ」という名前でそれぞれ独立しました。

こちらの野中貿易ビル(道玄坂)には何時頃移転されたのですか?

2002年に移転してきました。それぞれが専門店として各フロアで運営しています。(2F セルマー・ジャパン / 3F ブラスプロ / 4F ノナカ・ダブルリードギャラリー)

「ダブルリード」という言葉は一般にはあまり馴染みがありません…。具体的にはどのような楽器で使われるのですか?

その名前の通り、2枚のリードを使って音を出す方式の楽器で、オーボエファゴットが代表的な楽器になります。

サックスやクラリネットなど他の管楽器とはどう違うのですか?

クラリネットとかサックスみたいに、マウスピースにリードを付ける楽器とは違って、2枚のリードを組み合わせ、それが振動して音がでます。草笛とか、ストローを切って笛みたいにするのと同じ原理です。元々は草笛が発祥とも言われています。

草笛が元祖かもしれないのですね! オーボエ、ファゴットというと管楽器の中では、ややマイナーな楽器という印象がありますが…。

オーケストラには必ず必要とされるパートですよ。木管セクションでオーボエ2人、ファゴット2人が配置されます。でも、吹奏楽だと大人数の編成でないと、オーボエ、ファゴットは入らなくなってしまいましたね。

近年は少子化などでスクールバンドの小編成化が進んでいると聞きましたが、学生さんのオーボエ・ファゴットプレイヤーも来店されますか?

中学生、高校生も大勢お店に訪れてくれますよ。お店には、オーボエ、ファゴットそれぞれ多くの方が来店されますが、部員の少ない吹奏楽部ではファゴットまで人がまわらないようです。

このリード類の商品の品揃えは圧巻です。

ダブルリードは1本1本手作りなので、リードと吹き手の相性がとても繊細なのです。うちには、いろいろなお客様が来ますので、常時20種類くらい用意していないと対応できないですね。

手作りなのですね。値段も高くなりそうです。

そうですね。サクソフォン、クラリネット等のリードは1箱に10枚くらい入っていて2,000円〜3,000円で買えますが、ダブルリードの場合は1本で2,500円〜3,000円しますね。

なるほど。他にもダブルリードにまつわる道具も多数並んでいます。

オーボエ、ファゴットなど楽器本体から始まって、リードを作るための道具やメンテナンス用品まですべて揃えています。ここまで、いっぺんに色々な品物の現物を手にして見ることができるのは当店くらいだと思います。海外の方も大勢来店されます。

さすがの充実ぶりです。やはり、楽器は現物を見て、試奏して選びたいですね。

そうですね。うちは通信販売もやっていますが、楽器本体はもちろん、リードからアクセサリーまで現物を手に出来る環境作りを大切にしています。

オーボエの最高級ブランド「マリゴ」の直営店

ノナカ・ダブルリードギャラリーさんのようなダブルリード専門店は他にもあるのですか?

当店くらいの規模になりますと日本国内では2つ3つくらいでしょうか。ヨーロッパ、アメリカでは通信販売が主流で実店舗のショップが少なく、あったとしても品揃えが少ない、小さな店舗がほとんどですね。

国内の他社ダブルリード専門店との違いや特徴、差別化している部分などについて教えて下さい。

本社(野中貿易)が2007年「マリゴ」という、オーボエの最高級ブランドで世界的に有名なオーボエメーカーを買収しましたので、当店ではマリゴの楽器をメインに扱っています。他店でもマリゴは扱ってもらっていますが、他社のメーカーをメイン商品として販売しているお店もあります。

なるほど、野中貿易の直営店ということですね。

そうなります。直営店ということで、(その他のメーカー商品などの)取り扱いは限られますが、直営店の強みというのは大きいです。ですので、他店との差別化、というよりは、棲み分けという感じに近いと思います。

ちなみに、オーボエやファゴットは値段的に高価な楽器ですよね?

基本的にダブルリードの楽器は高いです。オーボエは安くても40万円から、ファゴットだと60万円からになります。高いものですと、オーボエのスタンダードで上級機種は120万円〜130万円、オーボエは金メッキ加工や特殊な素材を使用すると150万円オーバーといった感じです。

車買えちゃいますね(笑)。値段の違いは製作手法や素材などの違いでしょうか?

楽器の値段は“どれだけ精度よく作るか”という部分で変わってきますが、オーボエは価格の幅(レンジ)は狭いほうなんですよ。フルートなどは、下は10万円ぐらいから、上はプラチナや金で製作したもので700万〜800万円の物もあります。

もはや色んな意味で財産ですよね(笑)。

そうですね。ダブルリード楽器は高価な物ですので、その予算の中でお客様に満足していただける楽器をお届けしたいですね。

それでは続いて、山田さんと楽器との出会についてお聞かせください。

中学時代からいろいろなレコードを聴いていて、サックスをやりたいと思っていました。それで高校に入って吹奏楽部に入りました。といっても、僕らが入らなければ潰れてしまうような弱小の吹奏楽部だったのですが。

最初はサックスだったんですね。

はい。オーボエをはじめたのは大学4年生の時になりますね。当時アンサンブル・ウィーン=ベルリンという木管五重奏団が流行っていて、その演奏を聞いた後輩から「木管五重奏をやってみませんか?」と誘われまして、そこで私がオーボエを始めて、チューバをやっていた同級生がファゴットを担当したんです。

吹奏楽での活動というのは本格的なものだったのですか?よく、練習量が半端ないスパルタ的な話を聞きますが。

中には1年間でほとんど休みが無いなんて所もありますが、僕らの活動はそのようなことは無く、放課後夕方5時まで練習して終わりという部活で、休みの日まで練習ということはほとんどありませんでした。

大学卒業後は就職されたのですか?

2年ほど一般企業に勤めていましたが、縁あってダブルリード専門店で働くことになりこの世界に入りました。その後、ここに入って現在に至ります。

宮本文昭さんのCMでオーボエという楽器が広まった

影響を受けたアーティストを教えて下さい。

オーボエで言えば、宮本文昭さんですね。日本人オーボエ奏者としては1番有名な方だと思います。20数年前のたばこのCMでオーボエを吹いている映像覚えています?(※1989年JT「ピース・インターナショナル」)

ヴァイオリニストの宮本笑里さんのお父さまですよね。CMの映像はちょっと…、見ればわかるかもしれません。

CMで宮本さんが演奏している姿が流れ、そのおかげでオーボエという楽器が日本で認知され広がったんです。この影響が大きかったですね。以前、一般大学生がオーボエを始めたと聞いたので、理由を尋ねたら、「宮本さんに憧れてやってみたいと思った」ということでした。他にもそういう人は結構いましたよ。

珍しい楽器だっただけに、CMにも注目が集まったのでしょうか。

宮本さんはルックスも華やかで、いわゆるスターですよ。僕はCMの前から知っていましたけど、僕らの世代にとってはアイドル的存在でした。

それでは最後になります。「ノナカ・ダブルリードギャラリー」さんからのメッセージをお願いします。

ダブルリードの楽器というのは、特有の音の立ち上がりや深い音色をもつ魅力的な楽器ですが、リードなり、楽器の調整なり、チューニングなりで困っている方が多い楽器でもあります。お客様の困っていること、苦労している部分をお伺いして、ちょっとした対応を施すだけで解決することもあります。ぜひ、お気軽にご来店頂きご相談下さい。

ネットでのオンラインショップもあります。メールなどでも相談に応じてもらえるのでしょうか。

特にリードについては「こういう音を出すにはどうすれば?」「重たくて抵抗があるリードが欲しい」といった相談をメールでも頂いていますが、メールですと、ちょっとした言葉の誤解や細かなニュアンスが伝わらない事もあります。なので、相談はお電話か、もしくはお店に来ていただくのが近道かもしれません。遠方の方だったら電話いただいた方がいいですね。もちろんメールでもご対応しますよ(笑)。

ダブルリードの魅力が多くの方たちに伝わればと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。

野中貿易 セルマー・ジャパン編へ

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2016年6月)

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セルマー・ジャパン
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アクタス2Fにあるサクソフォン、クラリネット、フルートの専門店。世界に4台しかない「リードの固さを正確に測定する装置」を完備。併設するスタジオ・ホールにてプロ奏者によるレッスンやコンサート等も数多く開催。
ブラス プロ
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アクタス3Fにある金管楽器の専門店。バック、ホルトン、コーン、キング、システムブルーなど輸入楽器の名ブランドを揃え、マウスピースや交換用パーツも充実。リペアルームでは腕利きの技術スタッフが在駐。
サウンドペディア
宮本文昭
日本を代表するオーボエ奏者。NHK朝の連続テレビ小説の主題歌や、テレビCM曲での演奏、コンサート、多数の作品リリースで魅了した。2007年オーボエ奏者として引退後、2015年まで指揮者として活動。東京音楽大学教授、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団音楽監督。二女はヴァイオリニストの宮本笑里。