e楽器屋.comが取材した楽器店・インタビュー特集(全36回・2015年3月〜2019年12月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

楽器屋探索ディープレポート Vol.22

新大久保 HyperGuitars

Hyper Guitarsについて
1989年、ヴィンテージ楽器専門店がほとんどなかった時代に創業。ギタリストにヴィンテージ楽器の魅力を伝道し、オーナー様の心強いパートナーとして多くのファンを持つ、日本を代表するヴィンテージギター、ベース&アンプ専門店。ロックギターヒストリーに欠かせない50年代から70年代のギブソン、フェンダーを中心に、コンディションのよい楽器が多数並ぶ。ギター博物館さながらの店舗は、一つひとつの楽器の「語りかけ」にゆっくり耳を傾けたくなる空間。リペア体制・アフターサポートも万全。新大久保駅から徒歩1分。楽器の査定や買い取り・下取りは随時受付。
Hyper Guitars店舗情報
HYPER GUITARS 公式サイト
東京都新宿区 百人町1-11-23-B1
TEL:03-5386-4910
営業時間:11:00〜20:00

楽器店の中の人に話を聞いてみた〜 HYPER GUITARS 編

このコーナーは、楽器店でミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューしてお話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

HYPER GUITARSマネージャー 長島英樹氏

本日は新大久保ヴィンテージギター&アンプ専門店「ハイパーギターズ」のマネージャーの長島英樹さんにお話をお伺いします。オープンはいつになりますか。

平成元年にオープンですので、もう29年になりますね。僕は、オープンから2、3年後くらいに入社しました。途中、一時的に離れていた時期もありますが、また戻ってきて、現在に至ります。

このビルの1Fにも楽器店がありますが、お店は独立した店舗になるのですか?

はい、完全に独立経営でやっています。

平成元年となると老舗といってよい歴史がありますが、オープンした経緯について教えていただけますか?

当時、ヴィンテージ専門の楽器店はもちろん、ヴィンテージギター自体が日本国内で希少でした。そんななか、「この業界でぶっとんだことをやりたい」という志から、ヴィンテージに特化するというコンセプトで開業しました。店名のHYPER GUITARSも『超越した』『ぶっとんだ』という意味合いからつきました。そのスタンスは今でも変わりません。

ヴィンテージ楽器の博物館のような店舗に驚きました。どうやれば、ここまでの商品を揃えられるのでしょうか?

ヴィンテージ品の入荷ルートに関しては「築いてきた」という感じでしょうね。オープン当初は日本人には売ってくれないディーラーも多くいまして、大変な時代もありました。今でこそ、海外のディーラーとも懇意していますが、当時のアメリカ人は日本人に厳しい人もいたんですよ。

30年近い地道な活動が今を作ったのですね。

そうですね。毎年、楽器ショーに買い付けに行くうちに、徐々に買えるところが増えていきました。おかげさまで、今では向こうから掘り出し物を紹介してくれるまでになりました(笑)。

ヴィンテージ楽器にもいろいろ種類があるのですよね?古ければ古いほど価値が高くなる?

ヴィンテージ楽器全体をみると、エレキギターの歴史はそんなに長くないので「古さ」に特化するなら、やはり「アコースティックギター」を指すことになるのだと思いますが…。現在の在庫では、ギブソン社の約60年前エレキギターが都心の一戸建ての家と同じ価格で販売しています。当店は、ほとんどエレキギター、いわゆるソリッドギターと言われているものが主力商品です。

HYPER GUITARSが取り扱う主なメーカーは?

王道のフェンダー社、ギブソン社をはじめ、世界中のギタリストに人気があるメーカーのもので、それなりに、お値段も張る、という楽器がメインです。

一つとして同じ状態の楽器はない。個体にあわせた微妙な加減が腕の見せどころ

ヴィンテージものといえば何しろ古い年代物なわけですが、楽器として大丈夫なものなのでしょうか?

これらのメーカーで、50年代あたりに作られた楽器に、特にすばらしい楽器が多いのですが、当店にあるものは、その中でも特にコンディションの良いものを扱っているので、まったく問題ありませんよ。

ここでは、古い楽器を仕入れて、修理してさらにコンディションを良くして提供しているのですね?

その時代の楽器自体にすばらしいものが多いので、大きく手を加えるようなことはしません。良い状態を維持するためのメンテナンスや、ご要望に合わせて調整、リペアをするというのが主な作業になります。ヴィンテージ楽器を取り扱う場合、個体にあわせた微妙な加減が腕の見せどころです。

HYPER GUITARSで扱う楽器の調整やリペアは、長島さんご自身が行われるのですか?

はい、基本的には僕が全部みています。もちろん、スタッフに手伝ってもらうところはありますが、当店で取り扱っている楽器は全て自分で把握しておきたいので。それに何より、もっともっと自分が成長したい。どれだけやっても、まだまだ知らないことが多くて、終わりがない(笑)。どのような楽器でも1度はさわって経験しないといけないと思っています。

常に楽器から学ぶことがあるのですね。長い経験からマニュアル化はできないものですか?

わずかな調整をとっても、一つとして同じ状態の楽器はありませんし、お客様のご要望や作業する人の好き好きな部分もあるので、これといった具体的な答えがない世界です。「絶対にこうあるべき」というセオリーはないかなと思います。

実店舗で直接、長島さんに対応していただければ安心ですね。ただ、ネット通販専門店などが増え、音楽不況とも言われていますが、そのあたりの影響はありますか?

当店も長いので、時代によって購買層の変化などはありますが、流行り廃りの激しい世界ではありませんし、創業当時からずっと通っていただいているお客様も多くいらっしゃいますので、これといって、大きな影響はありません。

創業当時からのファンが多くいることが、長島さんとお店の信頼と実力の証ですね

そこはとてもありがたく、誇らしく思います。

家にステレオがなくて、ラジオから聴こえてくる音楽が僕の情報源でした

では続いて、長島さんと音楽の出会いについてお聞かせ下さい。

僕は1966年生まれですが、その頃の音楽ソースといったら、ほとんどレコードでした。でも、僕の家は裕福ではなかったのでステレオがなくて、小・中学校時代は、ラジオから聴こえてくる音楽が僕の情報源でした。歌謡曲よりロックっぽい音が好きでしたね。『ギュイーン』ってギターのひずむ音に大興奮しちゃって、そこから音楽にハマったと思っています(笑)。

憧れのミュージシャンは?

僕はずっとCharさんが大好きです。Charさんが入り口で、海外ミュージシャンにも興味を持ちました。3大ギタリストのエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジから入って、リッチー・ブラックモアにも影響を受けました。

ハードロックの歴史を作った偉大なギタリストたちですね。

まさに王道ですね。

長島さんご自身は、バンドなども組まれていたのでしょうか?

それがまったく(笑)。僕はバンドよりも楽器そのものに夢中でした。少年のころは、同級生の家にお兄さんのギターが置いてあったりしたもので、それはもう触りたくてしょうがなかったですね。通っていた幼稚園の園長先生の息子さんがドラムセットを持っていて、もう音が鳴るだけでもう大興奮でした。

おお、筋金入りです(笑)。

しかも、その家にはレコードも1,000枚単位であって、僕が知らないレコードばかりで、ジャケットを見るだけで楽しかったです。歳を経て、そういえばあのラインナップにすごくレアなレコードがあったなぁ、と鮮明に思い出します(笑)。

憧れに彩られた素敵な思い出ですね。

そうですね。自分自身がプレイヤーになることより、楽器や機材を触ったり、音楽を聴いたりする方に興味がありましたね。今も趣味でオーディオには凝っていますよ。

一生涯付き合っていきたいくなる楽器、それがヴィンテージギターの魅力

オーディオというと音源のコレクション?

いえ、収集というよりはオーディオ機器の調整です。自分のチューニングしたシステムでどうやったらより素晴らしいサウンドになるか、そういう部分のおもしろさです。それもオーディオ本体だけでなく、反射を考慮した環境作りまで多岐に渡ります。ギター以外にもサーフィン、バイク、車など、いろんな趣味がありすぎて、楽しむことで精一杯です(笑)。

現在進行形で全部やっているのですか?

仕事の方も忙しいのでサーフィンはなかなか行けないけど、それ以外はやっていますよ。

それは忙しいですね(笑)。そのバイタリティ見習いたいものです。では最後になりますがHYPER GUITARSからメッセージをお願いします。

一度、すばらしい楽器を知ってしまったら離れることができない、一生涯付き合っていきたい楽器、それがヴィンテージギターの魅力です。「ヴィンテージ」というと値段が高く、手が届かないものと思われるかもしれませんが、一つの楽器であることには変わりません。近年は、多くのミュージシャンがヴィンテージギターを使っていますが、彼らが、なぜそのギターを選んだのか? そんなことも頭の片隅にいれて、まずは興味をもって頂きたいですね。

ぜひ、多くの方にヴィンテージギターの魅力を知って頂きたいですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2017年10月)

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