e楽器屋.comが取材した楽器店・インタビュー特集(全36回・2015年3月〜2019年12月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

楽器屋探索ディープレポート Vol.1

渋谷 えちごやミュージック

えちごやミュージックについて
渋谷のシンセ・DJ・レコーディング機材の販売&買取専門店、知る人ぞ知るプロサウンドショップ。そしてその「知る人」は、世界を股にかけた規模に及ぶ。ここに来た人々は、その瞳を子供のように輝かせ、宝の山を見つけたかのごとく興奮する。その理由はただ一つ、「レアものの宝庫」ということだ。音楽業界がどのように変化しようとも、一貫した姿勢でこだわりの機材を取り扱ってきた店だからこそ、揺るぎない信頼とニーズを得ているのである。一度店を訪れれば、機材のみならず、その迷わぬ姿勢に感動をもらえることであろう。
えちごやミュージック店舗情報
えちごやミュージック 公式サイト
東京都渋谷区神南1-12-18 メゾン渋谷9F
TEL:03-3464-0905
営業時間:12:00〜20:00 定休日なし

楽器店の中の人に話を聞いてみた〜 えちごやミュージック 編

このコーナーは、楽器店でミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューしてお話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

えちごやミュージック 北村 貴宏 氏

本日はよろしくお願いします。まずは、多くの人が気になっている(笑)、ショップ名の由来について教えて下さい。

「えちごやミュージック」は1995年に設立しました。名前の由来は、オーナーの頭の中に、時代劇で定番のセリフ「越後屋、お主も悪よのう〜」の台詞がインパクトがあったようで、そのインパクト一本勝負で名付けたと聞いたことはあります。が、真相は分かりかねます(笑)。

音楽とは関係ない理由なんですね(笑)。

新潟のお客様からはよく親近感を持たれます。しかし、新潟出身のスタッフは一人もいませんが…。

そこはノリでカバーしていきましょう(笑)。北村さんが音楽の世界に目覚めたきっかけは?

19歳の時に観た映画「SCRATCH」の影響でDJに興味を持ちターンテーブルセットを購入したのが始まりです。それと同時に、ヒップホップに強い衝撃を受けました。(※編:SCRATCH:2002年に公開されたDJのムーブメントの歴史を追った長篇アメリカ映画)

そこから機材にも強い興味をもった?

はい、ヒップホップのDJやプロデューサーの使用機材が気になり、TECHNICSやVESTAXのターンテーブルやミキサーなどのDJ機材、RolandのTR-808、E-MUのSP1200、AKAIのサンプラーSシリーズ、MPCシリーズ、ENSONIQ ASRシリーズなど、ヒップホップの歴史に欠かせないリズムマシンやサンプラーの存在を知りました。

TR-808くらいしかわからないです…(笑)。

俗にいう808=八百屋(やおや)ですね。 他にも、ヒップホッププロデューサーのプライベートスタジオにはRHODESやMINIMOOG、JUNO-106、MS-20等の数々の鍵盤楽器もある事を知り、サンプリングミュージックとシンセサイザーのつながりに興味を持ちました。それから、実際に触ってみたくなり、当時の先輩が働いていたこともあって、えちごやミュージックに客として通い始めました。20代の前半ころですね。

どれくらいの頻度で通っていたのですか?

週1ペースで通ってた月もあったんじゃないでしょうか? ターンテーブルをいじったり、RHODESを触ったりしてました。今思うと邪魔ですよね(笑)。でもそうしてるうちに、漠然とですが「ここで働きたい」と思うようになったんです。

今ここに居るということは、夢叶ったり、ということですね。

そうですね。通い詰めたかいもあり、スタッフの空きが出来た時に当時の店長からすぐにお呼びがかかり入社しました。その時が25歳です。それから現在に至るまで、楽器の買取査定、値付け、新製品の入荷等を中心に担当しています。

80年代の国産ドラムマシン・シンセは海外での人気も不動

とにかく、溢れんばかりのシンセやDJ機器の数に圧倒されています。どのような商品に人気があるのですか?

特に目立つのは、Roland/TR−808TR-909TB-303JUPITER-8KORG/POLY SIXMONO/POLY等の80年代を代表する国産楽器です。現在までに多数のクローン機種が発売され、ソフトウェア音源にもなっている定番中の定番で人気は不動です。これらの日本のメーカーのシンセやドラムマシンは世界的に希少でコンディションの良い物は少なく、海外ミュージシャンが来日した際に購入して頂く事もよくあります。ハウス、テクノ、ヒップホップ等のダンスミュージックで幅広く活用されています。

80年代、というとかなりのヴィンテージですね。とくに注目している機材はありますか?

ひとつは、AKAI MPC2000XL Prophet-5 CUSTOMですね。MPCのカスタムを行っているGhostinmpcによるMPC2000XL(DJ用リズムボックス&サンプラーの定番機)の世界に1台のカスタム品です。アナログシンセの名機Sequential Circuits Prophet-5をモチーフにしたパネルのウッド加工、ツマミの素材、液晶バックライトの色等、全てにおいてクオリティーの高い、まさにえちごやミュージック特有のオリジナル商品です。ヴィンテージ好きにはたまらない一品ですよ。

これだけ沢山あるとお客さんも求めている音の楽器をみつけるのも大変そうです、 そんなときは、どうするのでしょうか?

お客様の自分の耳で確かめてもらうのが一番良いので、えちごやミュージックの店頭にある全商品を試奏可能としています。また、来店できないお客様についても、具体的にイメージしている音を伺って機材を紹介したり、メーカー別の音の特徴を伝えしたりして購入のサポートをしています。

当時の高校生が、大人になってから買うという方も

私からすると、とてもマニアックな品揃えに思いますが、お客さんはどのような人が多いのでしょうか?

キーボーディストのお客様が多いですね。また、現行の楽器や機材ではイメージする音にならないということで、個性的なサウンドを求めて80〜90年代のヴィンテージ楽器や機材を探しているサウンドプロデューサー、クリエイターの方も多いです。あとは、発売当時は高校生で高くて買えずに大人になってから買う、というお客様もいらっしゃいます。

オトナ買いですね(笑)。最近はシンセなどの楽器もどんどんソフトウェア化してる感がありますが、「実機」の需要というのはどうなんでしょうか?

当店の場合、USED商品が中心でほとんどが1点物という事もありソフトシンセの発達に大きな影響はありません。むしろ最近では、名機の復刻版やKORG/volcaシリーズのような手頃な価格帯のアナログシンセ、自作できるモジュラーシンセ等の人気があって、新製品の購入層も増えてきていると思います。PCでの音楽制作に少し飽きてきたって人もいるような気がします。そういうお客様は実機の音や操作性に触れてしまうと実機にハマる傾向があります。

やはり本物・実機の魅力というのは大きいんですね。最近の楽器についてはどんな印象ですか?

楽器メーカーに関して言えばKORGの勢いがすごいと思います。アナログシンセの新製品や復刻版、海外メーカーの代理店業等がずば抜けてると思います。

確かにKORGは多くの現場で目にします。注目しているアーティストは?

最近はSoundCloudMixcloudなどのサイトを適当に漁って聴いているんですが、全く知らないアーティストでもクオリティの高い音楽が多くて楽しいです。再生回数が少なくて好きな曲に当たった時は、自分だけが知ってる感で勝手に勝った気がしてます(笑)。そのまま、そのアーティストの他の曲をどんどん掘ったり、フォローしてるアーティストを掘ったりしますね。Cloud系のサイトは、周りではよく『底なし沼』と呼んでたり…。

底なし沼(笑)

特に好きなジャンルの音楽に関して言えば、Dam-FunkTuxedoとかは、80年代の流れをそのまま進化させていてとてもかっこいいですね。Dam-FunkはSEQUENTIAL CIRCUITS/TOMを現役で使ってるみたいですし、まさにうちの主力商品ラインナップ(JUPITERシリーズやJUNOシリーズ)で出せる音で制作してますね。

まさに隠れ家的名店。

そういったミュージシャン達がえちごやミュージックに来たら、店ごと欲しくなるんじゃないでしょうか(笑)? 実際、国内外問わず、エレクトロと呼ばれるジャンルのアーティストの方々には、よく利用して頂いてます。『この人来たー!』ってびっくりする時もしばしば…。

ツマミをひねるだけで音作りが楽しめる、アナログシンセの魅力

では、初めて鍵盤に触れる人にアナログシンセやキーボードの魅力、メッセージをお願いします。

楽器を初めて触る方でも、作りたい音楽のイメージさえあれば制作方法と必要な機材をスタッフが提案します。アナログシンセやヴィンテージ楽器の魅力は、無制限にツマミをひねって自由に音作りが楽しめる所だと思います。基本操作だけ教えてます。あとはお客様次第です。『アナログシンセ1台で全てのパートのサウンドメイクをする』なんて事も出来てしまうかも。当店の売りでもある、シンセ&DJ機材を中心としたラインナップで個性的なプライベートスタジオ構築して頂けたらと思います。

好きな人には宝船みたいなお店ですね! 本日はありがとうございました。

ありがとうございました。最後になりますが、不要な楽器がございましたら是非ともお問い合わせ下さい。高価買取いたします!

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2015年3月 / 最終更新 2019年7月)

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