楽器屋探索ディープレポート Vol.9

恵比寿ドルフィンギターズ

ドルフィンギターズについて
大阪江坂に本店のあるギター専門店。ギター販売・リペアを中心にレッスン、専門レーベルからの作品リリース、ライブやセミナーのイベント主催する。中でもアコースティックギターの魅力を追求し、ビギナーからプロフェッショナルまで多くのギタリストに愛されているギター工房。ギターショップの先駆け的存在でもある。大阪の老舗総合楽器店のギター部門からはじまり、アコースティックを中心に扱う専門店として独立、1998年大阪江坂に店舗をオープン。2010年、東京渋谷区に恵比寿店オープン。
ドルフィンギターズ店舗情報
【東京】渋谷区恵比寿西1-10-8 本間ビル4F
TEL:03-6415-3580
営業時間:AM11:00~PM8:00(火曜定休)
【大阪】吹田市江坂町1-23-34 第2梓ビル5F
TEL:06-6310-6180
営業時間:AM11:00~PM8:00(水曜定休)
ドルフィンギターズ公式サイト

楽器店中の人に話を聞いてみた〜 ドルフィンギターズ恵比寿店編

このコーナーは楽器店でミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

ドルフィンギターズ恵比寿店・店長 松下 靖弘氏 (右) / スタッフ 照屋 卓氏 (左)
ドルフィンギターズ公式ページ - Twitter - facebook

本日はドルフィンギターズ恵比寿店の店長、松下靖弘さんにお話を伺います。よろしくお願いいたします。まずはお店オープンの経緯など教えてください。

ドルフィンギターズは本店が大阪にあります。大阪本店が98年オープン、ここ恵比寿店は2010年の6月18日にオープンしました。

大阪から東京に進出したきっかけというのは?

以前から、東京にはお店を出したかったのですが、なかなかタイミングが合わずでした。ドルフィンギターズは98〜99年頃から、いち早くインターネット通販を開始していて、全国、特に関東圏の多くのお客さんに利用していただき「関東にもお店を出してほしい」という声を頂いていました。

それで、ここ恵比寿に店を構えるのですね。

そうですね。とにかく「関東にもお店を」と探していたところ、たまたま恵比寿に駅近で、江坂に雰囲気の近い物件があったので、ここに決めました。東京の楽器店といえば、御茶ノ水や新宿近辺にあるという印象が強く、僕ら関西人から見たら、それはもう圧巻です(笑)。楽器の商店街みたいな通りで店舗数の多さに強烈にインパクトがありました。

確かにあのエリアの密集度はすごいですね。江坂と恵比寿の共通点は?

『落ち着いた雰囲気』です。5〜6年ほど勤めていた大阪の梅田駅近の楽器店では、店の前に本屋があり、本を読んでいるお父さんの連れてきた子供が入ってきて走り回っていました。楽器を買おうとしている人、しかも高価な商品もあるので、真剣に購入を検討されるうえで、落ち着いて選べない環境は望ましくないということもあって、立ち上げ当初から社長は、そういった場所はあえて避け、比較的静かな街並みの大阪の吹田市、江坂に店を構えました。

なるほど、狙いとしては大きな繁華街を避けるといことですか?

そうですね。江坂店のある場所はビジネス街で、最寄りの大きなお店と言えば、東急ハンズくらいしかないところです。交通アクセスもあまり良くなくて、当店に来てもらう目的がないと辿りつけない場所です(笑)。ここ恵比寿も楽器店も少なく、新宿や渋谷のような繁華街でもない。人が多い所に店を開いて流れで入ってくるお客さんより、ドルフィンを、と狙って来てくれる方に、ゆっくりとお話しできて、じっくり選んでもらいたいという、江坂店と同じ意図でここに店を構えました。

お店としての方針がしっかり定まっていたのですね。

サロンのようにゆっくりと楽器を見てもらいたいですね。実際はそうとばかり言っていられないので、山手線内のアクセスの良い恵比寿という立地にしたわけです。

押尾コータローさんのようなソロスタイル演奏のギタリストからの要望が多い。

それでは次に、ドルフィンギターズで取り扱う楽器について少し詳しく教えて下さい。

エレキギターウクレレもありますが、どちらかと言うとアコースティックギター専門です。同じギターでも、ロックやポップスのバンド系に向くギターと、インストゥルメントに向くギターと2種類あります。

アコースティックギターも様々な種類あるのですね。

専門店というくらいなので、同じギターと言えども、品揃えが随分と違うと思います。当店は特に鉄弦のギターに特化しています。

ドルフィンギターズの得意としているギター、サウンドの特徴など教えて下さい。

まずはシンガーが使うストローク重視でまとまりのあるサウンド、それとボーカルなしのインスト系に向いているサウンドのギターです。ワン・オフ品だったり、いずれも特化した音作りのギターなので、他では扱っていないものも多数あります。特に、押尾コータローさんのように一人で全てのパートを演奏される、ソロスタイルを演奏されるお客様が多いです。

プロギタリストの方のギターも取り扱っているのですね。

プロギタリストの繋がりも多く、そのアーティストの方のご紹介でしたり、ダイレクトに要望を頂いています。プロ、アマチュア問わず、ギタリストからの信頼は多分厚く(笑)、調整や相談のことで、毎日何かしら相談はあります。

店舗では国内外ブランド品、ルシアー(製作家)によるギターが多数ありますが、オリジナルモデルのようなギターもあるのですか?

20年以上業界にいると、色々なギターに出合います。その中でもこれは“良い”とか、これは“無い”とか、我々の意向やアイディアを製作家に伝えて、共同で作ってもらうことが多いです。最近はそういって完成した楽器データを元に、僕ら売り手やプレイヤー目線で良いものを具現化すべく、当店オリジナルの“SWITCH”というブランドを立ち上げています。

ドルフィンギターの専用カスタマイズということですね。

相当数のギター達を長年見て、聴いてきましたから、その楽器の音が耳と頭にインプットされていますし、ギター細部の事もここをいじればこうなるとか、製作家さん達の楽器を通じで勉強しているので、調整でどれだけ音が変わる、などのノウハウはある程度わかります。カスタマイズ自体は量販店でもやっていますが、ブレーシングやブレーシング材の指定などといった、マニアックな部分までやっているところは少ないとおもいます。

松下さんの音楽との出会いの話を聞かせてください。

小学生の時、カセットテープのCMでエリック・クラプトンのレイラを聴いて、衝撃を受けたのがギター音楽との出会いです。

小学生でクラプトン…。渋いです(笑)。

中学生になってからは、大阪のローカルテレビでやっていたビートルズのアニメ番組をしょっちゅう見ていました。といってもその当時はビートルズがどれほどに凄いかとかもまったく知らなくて観ていたのですけどね(笑)。当時はバンドブームMTVなどもゴールデンタイムでやっていたので、ギター音楽は洋楽から入りました。高校時代はハードロックやメタルにハマってコピーバンドとかやりました。

「自分の好きなことってなんだろう?」と考えたら、その答えは『楽器』だった。

最初はエレキギターだったのですね。卒業後は音楽の方に進んだのですか?

いいえ。卒業後はコンピューターの専門学校に行きました。10代前半から、これからはコンピューターの時代になると思っていて「将来はプログラマーになるぞ!」と、自分でプログラミングするぐらいオタクな子供時代でした(笑)。その後、就職が某有名印刷会社に内定が決まっていたのですが「一生やる仕事だったら自分の好きなことをやっておきたい」と突然考え直し、「自分の好きなことってなんだろう?」と考えたら、その答えは『楽器』でした。

気持ちの切り替えと決断、早かったですね。

就職が内定してからですが、20代から安定を考えるよりも、やりたいことは若いうちにやっておかねば、後悔をしないため好きな事を仕事したいと思いました。断られる事を覚悟で、まともなアポも出来ない学生だった時分に、某楽器店に電話したら、電話に出たのが、たまたまそこの副社長で。すぐに面接してもらい、その後、採用、それからどっぷりとこの業界にいます。両親は何のためにコンピューターの専門学校に行かせたのかと嘆いていました。(笑)

どっぷり浸かれたというのも天職だったのかもしれませんね。

ギターも好きですが、話をするのが好きなので。高校一年の時、ビアガーデンでアルバイトしていたのですが接客では特に勉強になりました。お客さんはアルコールが入るとだんだん本性というか、気分が良くなって内面が露わになってくるんですね。その人はどういう立場の人、仕事なのか、カップルなのか、この場所に来たシチュエーションを考えながらちょっと話ししたりして、お客さんは次は何が欲しいのかとか、試に進めてみたりすると、「お〜若いノン、俺の気持ちがわかってるやん!おごるから飲め、飲め」とか言われると、よっしゃ!ってなりましたね。あ、当然、学生なので飲まないですけど。

そのあたり、楽器店でも活かされていますか?

はい、店ではもっと応用できます。楽器店には「ギターを探している」という共通点を除いては経営者、会社員、大学生、弁護士さん等、いろんな人が来ます。職種や立場が関係なく、多種多様な職種のお客さんに応対することになりますので。

ビアガーデンのアルバイトの時のように、お客さんの好みなどを引き出すコツなどもありますか?

あります。電話でのお客さんのテンション感、話し方、来店時の方には、身振りや素振り、その人の弾き方から判断することもあります。何よりモノを買う時、要らないものまで買わされるのではないかとい心理は、誰でも経験はありますよね? 大体はみなさんガードして、内に秘めていて、なかなか本音を出してくれないことがほとんどです。

そうですね、ちょっと店員さんに警戒すること、あります。

でも、ゆっくり話をしていくうちに、その人の中に僕が入り込んでいくと言うか、色々な事に共感していって、その人の好みや癖が分かり、そのお客さんの立場に立って他愛もない世間話になり、店員から友人みたいになります。

確かに、行きつけのお店の店員さんとは自然とそういう関係になるような気がします。

例えば良いのかどうかわかりませんが、モノを売りつけようとしていた、敵だと思われていたのが、実は知らぬ間に友達になっていた感じです (笑)。当然、友人関係になっていると、信用してくれますし、信頼もしてくれます。そもそも、実のことを言うと、僕はあまり楽器に詳しい方じゃないんで。

えっと、楽器店の店長さんからすごい発言が出てきたようですが(笑)。

もちろん、アコースティックギターに関しては特殊なものが多いので、一般の人より知っていると思いますよ。でもマニアックで知識豊富な店員の方のようなディープな知識はありません。僕としては「わかる人が誰かいるなら、その人に聞けばいい」と思っています。僕が全て知っている必要はないかなと。

お客さんの感じ方をキャッチして、最適なギターを提案するのが僕らの役目。

アインシュタインが「調べればわかることは一切覚えない」といってました(笑)。

こういう専門的なお店ですから、お客さんも詳しい方達ばかりです。お客さんは、ご自身が理想のギター1点を探しにきますので、僕らは、お店の商品に対して浅く広く知っておくという感じです。もちろん、それぞれのギターに対しての詳細のスペックや、誰々が使っているとかの情報は僕らも知っていますが。

そのあたりも調べればわかることですからね。

はい。ネットや雑誌にのってないようなその楽器の背景等はお伝えしますが、あまり詳しく伝えすぎると、主観の押しつけにもなり兼ねません。どんなに良い音のするギターと謳っていても、弾く人によって音って変わってきますので、知識だけでお薦めするようなことはしません。音の感じ方自体人それぞれなのですから、お客さんの感じ方というのをキャッチして、その上で最適なギターを提案するのが僕らの役目です。

接客業の真髄を聞いた気がします。

理想のギターを探すお手伝いということでは、他店ではやらないようなケアもします。たまに関西方面のお客さんから関東にある他店のこのギターどう? という相談なんかもされます。仲の良い常連のお客さんなのですが、実際、僕がそのお店にまで見に行って進めて販売したこともあります。

そこまでやるのですか!

例えば、アーティストがライブをしたい、ライブハウスでアーティストを探しているスタッフもいますので紹介することもしますし、損得抜きで、音楽という一つの輪でお互いに信頼関係を築いていくことが、結果的に店を利用してくれたり、人に紹介してくれたり、繋がっていくと思います。なにより僕自身がこういう橋つなぎみたいな事が好きなのですが。

このようなお客さんへの対応等については自然と身についたのですか?

僕は企業のセールス研修で使うような接客マニュアルや、コンサルタントになるための本みたいなのを読むのが好きで色々読んでいました。その中で商売の本質というか、大企業も、町の小さな魚屋さんも、個人対個人でも当てはまることだらけで、やっていることは人対人の事で、同じ事だと感じました。

そこから学んだノウハウが販売のノウハウにも活かされていると。

はい、まあ、書いてあったことは以前から自分で考えて実践していることがほとんどだったので、過去の接客業での経験を交えて、本はある程度参考に、自分が今まで積み重ねてきた事を繋ぎあわせて、接客で実践している感じですね。

好きに勝るものはありませんね。

接客に関してですが、個人的に服屋に入っても店員さんについて回られるのが苦手で、有名ブランド店では軽装だと少し見下した対応をする店員もいます。僕はそういうのが嫌なので、押しつけもしませんし、お客さんの区別をつけたりもしません。

それは、安心してじっくりギターを選べそうです。

一万円のギターを買おうが百万円のギターを買おうが、楽器が欲しい人に金額は関係ありませんし、応対も変わりません。一万円のギターを買ってくれた人が、その後百万円のギターを買うかもしれないし、はたまたプロミュージシャンになっているかもしれないですしね。

それでは最後にドルフィンギターズからメッセージがありましたらお願いします。

悩み無用!

どこかで聞いたフレーズですが(笑)。

大体のことは解決出来ますということで(笑)。リペアやセットアップはなんでも出来ますし、国内外のハイエンドな手工品を取り扱っていますので、まずは相談してください。「物理的に無理だ」ということはありません!

頼もしい限りです! 本日はありがとうございました。

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インタビュー&ライター 浅井陽 / BLOG(取材日:2015年10月)

過去のインタビュー記事はこちら

ミュージックジョブネット
恵比寿(渋谷区)
恵比寿
恵比寿ガーデンプレイスに代表される落ち着いた商業施設と、渋谷区で最高レベルの閑静で低層な住宅地が広がる人気の高い街。渋谷駅に隣接していながら、なぜか恵比寿エリアに流れる渋谷川の水質は大変綺麗である。恵比寿駅にはJR山手線、東京メトロ日比谷線の他、埼京線、湘南新宿ラインも乗り入れており、都心はもちろん埼玉、神奈川方面へのアクセスも良好。