楽器屋探索ディープレポート Vol.16

野中貿易セルマー・ジャパン

野中貿易/セルマー・ジャパンについて
野中貿易株式会社は設立から60年以上にわたって、世界で選ばれた楽器をさらに厳選し、最高の状態で日本の奏者に届けてきた楽器輸入商社。海外メーカーと緊密な関係を保ち、技術力の向上と技術者育成を怠らずに品質アップに務める地道な努力は、楽器を通じて日本における音楽文化の向上に貢献してきた。渋谷区道玄坂にある、風格ただよう野中貿易ビルは、2階のシングルリード楽器の直営店「セルマー・ジャパン」をはじめ、ショールーム、コンサートホールが各フロアに配置される。野中貿易のいわゆる顔である。
セルマー・ジャパン店舗情報
セルマー・ジャパン公式サイト
渋谷区道玄坂1-15-9 野中貿易ビル2F
お問い合わせ:03-5458-1521
営業時間:平日 11:00〜19:00、土曜 10:30〜19:00、日曜・祝日10:30〜17:30

楽器店・中の人に話を聞いてみた〜 野中貿易/セルマー・ジャパン編

このコーナーは楽器店でミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

【左】株式会社アクタスセルマー・ジャパン店長 加藤浩氏
【右】野中貿易株式会社開発営業部 Artist Relation Services 高尾和孝氏

今回は2回にわたり野中貿易株式会社の直営店、「セルマー・ジャパン」「ダブルリード・ギャラリー」を特集でお送りいたします。まずは、両店舗の親会社であります野中貿易について教えてください。

高尾野中貿易は昭和28年に設立以来、世界中の管楽器、弦楽器、打楽器、アクセサリー類を輸入している楽器専門商社です。

昭和28年(1953年)! これまでの取材でもっとも歴史のある老舗です。具体的には、どのような商品を取り扱っているのですか?

高尾セルマー・パリ、セルマーU.S.A、バック、キング、ホルトン、コーン、ルブラン、ラディック、マッサー、バンドーレン、マリゴ、ピュヒナー、ブランネンフルート、そしてミヤザワフルートなど、一流ブランドを取り扱っています。その他管楽器、マウスピース、リードなどのアクセサリー類に相当のシェアがあり、現在、海外メーカーとの代理店契約も約60社あります。

世界中の素晴らしい楽器たちが、野中貿易を通じて国内に流通しているのですね。

高尾そう言って頂ければ幸いです。2007年6月にはフランスのオーボエメーカー・マリゴ社を買収したので、メーカーとして奏者にダイレクトに楽器を提供できるようになりました。

「ダブルリード・ギャラリー」で取り扱っている楽器ですね。ぜひ次回くわしくお伺いしたいと思います。まず、この店舗「セルマー・ジャパン」でメインに取り扱っている楽器、メーカーについて教えて下さい。

加藤シングルリード楽器の、サクソフォンクラリネット、そしてフルートピッコロを取り扱っています。サクソフォンは「セルマー・パリ」「アンティグア」 クラリネットは「セルマー・パリ」「ルブラン」、フルートは「ミヤザワ」「ブランネン」、ピッコロは「ミヤザワ」「キーフ」というメーカーの楽器を取り扱っています。

楽器輸入の商社による直営店、となりますと、店頭には自社で取り扱うメーカーの楽器だけが並ぶということですよね?

加藤はい、自社取扱いメーカーのみの展示となり、お客様への商品情報提供と販売がメインとなります。他、取り扱い製品の楽器やアクセサリーに触れてもらうショールームも兼ねております。

ここに来れば、野中貿易が取り扱う世界の名品をじかに見て、試奏できるのですね。

加藤はい。試奏はもちろん、ショップの目的としては、お客様の声を直接お聞きしてメーカーにフィードバックするという役目もございます。全国の小売店(楽器店)さんを通じて、エンドユーザー(楽器を購入する人)さんから、いろいろな情報を頂いていますが、我々も、店頭でお客様からご意見やご要望を受けて、改善に活用しています。

セルマー・パリの歴史について教えて下さい。

加藤現在のサクソフォンの生みの親であるアドルフ・サックスより製作を引き継いだ唯一のメーカーとして創業130年以上の歴史があります。現在はクラリネット・サクソフォン・それに付随するアクセサリーの製造のみですが、フルート・オーボエ・ファゴット・金管楽器・ギターなども製造していました。 「セルマー」と聞くと皆様サクソフォンのイメージが大きいと思いますが、創業者のヘンリー・セルマーはクラリネット奏者で、クラリネットの製造販売が最初でした。それから数々の銘器を発表し、2014年には新しいブランドSELES(セレス)が登場しアルトサクソフォン「AXOS(アクソス)」クラリネット「Présence(プレザンス)」今年「Prologue(プロローグ)」が発売となりました。

フルートのミヤザワの特徴は?

加藤ブローガーシステムというミヤザワだけが国内製造を認められているキイ・システムを全機種に標準装備しており(ピッコロ、アルトフルートを除く)、演奏者に軽快かつ安定性のあるフィンガリングを実現してくれます。また経年変化や耐久性の面でも安定しています。 華やかで明るくパワフルな音色に定評があります。2012年にはピッコロ「VIVACE(ヴィヴァーチェ)」を発売、今年4月には新総銀製ハンドメイドモデル「MXシリーズ」も登場し、さらなる音への探求心と技術開発に余念がありません。

これらの楽器はプロ向けで、お値段的にもなかなか手が出しにくい印象がありますが…。

加藤 プロ向けの楽器ということでなく、初心者の方でもご購入いただいています。お客様が納得いただける楽器をお求めいただき、アフターフォローも万全な環境を整え、価格以上の付加価値を提供したいと思っております。また高価格帯の楽器だけでなく低価格帯まで品揃えしておりますのでお客様のご予算に応じてアドバイスさせていただいております。

それは安心です。値段の幅はどれくらいのものなのでしょう?

加藤基本的にアルトサックスで50〜60万円ですが、クオリティをそのままにコストダウンに成功したAXOS(アクソス)定価38万円(税抜)も御用意しています。初心者向けには当社オリジナルの「アンティグア」など10万円以下のモデルもあります。

10万円以下となりますと、はじめて楽器を持つ方も購入しやすい価格帯ですね。

加藤はい。ちなみに「安い=期待できない、機能は大丈夫?」と思われるかもしれませんが、当社で扱う商品はそうではありません。「アンティグア」は台湾製ですが輸入してそのまま売る、ということはございません。仕入れてから技術者が検品、調整して、誰が吹いても吹きやすい完璧な楽器に仕上げてから店頭に出しています。またどのような価格帯の楽器でも1年間のメンテナンス保証も付いています。

良い楽器で生演奏を体感してもらう場が必要

少し楽器業界、というか音楽業界のことについてお伺いします。ここしばらく、音楽業界自体が下火だと言われておりますが、そういった影響はありますか?

加藤影響ですか…?どうでしょう。 確かに少子化の影響やそれにともなう吹奏楽部員の減少の影響はもちろんありますが、当店はショールームを兼ねた直営店で、一般の小売楽器店とはやや形態が違います。そのためオリジナルアクセサリーを展開したり、外国の有名プレイヤーのコンサート・マスタークラスを開催し、当店を知っていただき店頭に足を運んでいただけるような努力をしています。

野中貿易で取り扱うようなプロ向けの楽器自体の需要はどのような印象ですか?たとえば、サクソフォン、クラリネットといえば吹奏楽部から始めて、音大そしてプロを目指す方も多いと思いますが。

加藤当店では音楽大学に定期的に訪問させて頂いておりますが、毎年、新入生が入ってきますので、将来有望な演奏家もいらっしゃいます。そこからお付き合いさせて頂き、卒業後も御利用して頂く様にしております。

プレイヤー人口を増やす、普及させるにはどのような活動が必要でしょうか。

高尾まずは、生の演奏を聴いてもらう環境をつくること、コンサートや楽器の展示会などを定期的に開催して、多くの方に生で楽器の音を聴いていただいて、楽器に触れてもらう機会を増やすことだと思います。今や、YouTubeで音源を聴くようになってしまっているので、良い楽器で、プレイヤーの生演奏を体感してもらう場は必要だと思います

それでは続いて、お二人の音楽との出会いについて教えてください。まずは、店長の加藤さんからお願いします。

加藤中学時代から吹奏楽に憧れていたんですけど、両親に中学までは運動をやりなさいといわれ、小学校は陸上部、中学校はバレーボール部でした。そして、高校になってから、ようやく吹奏楽部に入れました。楽譜も読めない状態で(笑)。

高校で吹奏楽デビューですね。どの楽器を担当されたのですか?

加藤サクソフォンを希望しました。そのまま、高校から大学まで7年間サクソフォンをやって、社会人になってからも、4年間ぐらいはアンサンブルをやっていました。最近はご無沙汰ですけど(笑)。

吹奏楽はハードな練習するので、運動部が役に立ったのでは?

加藤はい、高校時代はコンクールで東海大会にいけたので、練習は結構ハードでしたね。夏休みはほぼないような感じでした(笑)。演奏することは好きでしたので、まったく辛くはなかったです。

大学卒業後は?

加藤ここに入る前はデパートの丸井で働いていました。そこではアパレルでしたね。でも、やっぱり楽器に携わりたいと思って、30歳から転職しました。

やはり楽器の魅力には抗えなかったのですね。丸井のアパレルから楽器業界へ…、かなり飛びましたね(笑)。

加藤そうですね、でも接客という意味で言えば、基本は一緒かな、と…(笑)。

気づいたら、目の前に憧れだった人たちがいるっ! 

それでは野中貿易の高尾さんの楽器との出会いを教えてください。

高尾僕は小学校5年生からサックスを始めました。当時には珍しく、小学校にブラスバンド部があって、そのまま、中学校・高校と続けて、気づいたら音大に入ってプロを目指していました。まあ、よくある話なのです(笑)。

音楽一筋ですね。プロ活動をしていたのですか?

高尾学生の時から演奏活動をしていて、プロの道も考えていましたが、大学を卒業する頃には、演奏を続けるというよりは、楽器を通じて音楽に携わっていくという仕事に興味を持ち、ここへの就職に至りました。

音大新卒で入社した、生え抜きということですね。入社してみて、野中貿易でのお仕事はどうでしたか?

高尾そもそも、MALTAさんや伊東たけし(T-SQUAREなど)さんに憧れてサックスを始めた大ファンなのですけど、入社してからアーティストリレーションといって、プロのプレイヤーの対応をする仕事で、気づいたら、目の前に渡辺貞夫さん、MALTAさん、伊東たけしさんはじめ、憧れだった人たちがいるっ! ていうのが驚きでした(笑)。

過去の自分が見たら、びっくりでしょうね。

高尾いやあ、もう信じられない光景でしょうね。「なんでこんなに普通に喋ってるんだろう!?」って思うでしょうね(笑)。そういうプロプレイヤーの皆さんのサポートが出来るのは嬉しいことです。

プロフェッショナルな職場で、入社のハードルが高そうですね(笑)。

高尾いえいえ、入ってから覚える事ばかりです(笑)。基本は、まっさらな状態で入社する者ばかりですよ。それでいて、楽器が好きな人、演奏できる人だったら尚のこと良い、という感じです。基本的には、自分や加藤を含め、管楽器をやってきたスタッフが多いですけどね。

それでは最後になります。メッセージなどありましたら、セルマー・ジャパン店長の加藤さんお願いします。

加藤こちら渋谷のビルには、セルマー・ジャパン、ダブルリード、ブラスプロの、各フロア専門スタッフを常駐させ、各楽器に詳しいスタッフがお客様の対応をしております。プロの方はもちろん、趣味の方、初めて楽器を持つ方でも、気軽に楽器に触ることができるように心がけております。イベントホール、レッスンルームもありますので、プロから初心者まで、多くのプレイヤーに集まって頂けるお店を作っております。

また、弊社は国内外のプレイヤーとのお付き合いが多いので、特にソロ譜面に関してはいま欲しい楽譜をタイムリーな情報として共有することが出来ます。さらには、野中貿易との海外メーカーとのつながりもあるため、より鮮度の高い品揃えが可能ですので、是非とも一度足を運んでいただけば幸いです。

購入のアドバイスや楽器の状態でお悩みの方などご相談を受け付けていますので、初心者の方もぜひご来店お持ちしております。また、ネット通販も積極的におこなっていて、楽天市場Yahoo!ショッピングからも購入頂けますので、こちらもご利用頂ければと思います。

本日は詳しいお話、ありがとうございました。

加藤&高尾ありがとうございました。

では続いて、本ビル4階、ダブルリード楽器専門のお店「ノナカ・ダブルリードギャラリー」にお話をお伺いしたいと思います。

ノナカ ダブルリードギャラリー編へ

インタビュー&ライター 浅井陽 BLOG / Twitter(取材日 2016年6月)

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スティールパン・ガレージ
トリニダード・トバゴ生まれの旋律打楽器・スティールパンの専門ショップ。テナーパンからチェロパン、ベースパンまで国内随一の品揃えで、実店舗(北新横浜から徒歩1分)にて試奏が可能。スティールパンレッスン開講中。
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