e楽器屋.comが取材した楽器店・インタビュー特集(全36回・2015年3月〜2019年12月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

楽器屋探索ディープレポート Vol.29

2022年4月3日をもって、掲載店舗での営業は終了しました

高円寺 Bridge Guitars

Bridge Guitarsについて
高円寺北口のビザールギター専門店。ビザールギターとは海外ブランドのエレキギターを模倣して作られた、B級、C級の味を醸し出すユーズドギターの呼称。ブリッジギターズでは60年代の国産ビザールを中心に販売、買取り、修理&調整を行う。レトロで奇抜なルックス、愛すべき存在感はもちろん、できるだけ演奏しやすく調整し、購入後すぐに弾いてサウンドを楽しめるのも魅力。ギターネットショップを経て2016年7月店舗オープン。2018年6月より北中通り商店街に面した現新店舗に移転リニューアル。
Bridge Guitars店舗情報
Bridge Guitars 公式サイト
東京都杉並区高円寺北3-10-3
TEL:090-6265-7642
営業時間:土日祝 13:00〜19:00(平日定休)

楽器店の中の人に話を聞いてみた〜 Bridge guitars 編

このコーナーは、楽器店でミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューしてお話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

Bridge Guitars 店長 高澤瑛氏

本日は、高円寺にあるビザールギター専門店「Bridge Guitars」店長の高澤さんにお話をお伺いします。オープンはいつになりますか?

2016年7月23日のオープンになります。

まず、「ビザールギター」を知らないという一般の方もいると思います。ビザールギターとはなんでしょうか?

一般的に「ビザールギター」というのは、フェンダーやギブソンなど、海外ブランドのエレキギターを見よう見まねで作ったB級、C級扱いされているギターの総称です。日本でもエレキギターが流行りはじめた60年代頃から作られていました。

「ビザールギター」の魅力とはどういったところですか?

やはり個性的なデザインですね。世界中のあらゆる地域で作られているので、作り手の国民性なども顕著に現れるところが興味深いですね。例えるなら「同人誌」の世界に近いかもしれません。

ビザールギター専門店を立ち上げた理由をおしえて下さい。

僕自身バンドをやっていて、いろいろなビザールギターを試奏できるお店があったらいいなと思いました。ビザールギターが弾けるお店って少なくて、どの楽器屋さんでも一本あるかないか。あったとしても弾ける状態になっていないものがほとんどでした。

なるほど。高澤さんの「ビザールギター愛」から生まれたお店なのですね。

ええ。建前上は…(苦笑)。

ヤフオクで買った1万円のベースを研磨したら2万円で売れた

となると、実際のところ、をお伺いしなければなりません。

もちろん、ビザールギターは好きですが、結果的にビザールギターを専門的に扱うようになった訳で、じつは、最初はリサイクルショップをやろうと思っていました。

なぜリサイクルショップを?

今はずいぶん減りましたが、どこかで拾ってきたような物を売っているリサイクルショップってあるじゃないですか? これだったら自分でも出来そうだなと思って。

たしかに、そういうお店をチラホラと見かけますね(笑)。

それで、ノウハウを知るために、まずはリサイクルショップでバイトしてみたのですが、現実はきびしかったですね。新品家電が安く出回るようになって、リサイクル業界も、あればあるだけ売れるという時代ではなくなってきていました。それに、倉庫の家賃がかなりかかるし、回収用の軽トラもいる。自分の初期投資額では無理だなと。

昔ほど、中古家電を扱うようなリサイクルショップは見なくなった気がします。

それで、アパレルのリサイクル業をはじめました。フリーマーケットで仕入れたブランド品の古着をヤフオクで売る、いわゆる、せどり(背取り)のようなこともやっていましたが、競合が多いし、つねに商品が仕入れられるわけじゃない。

ネットのオークションやフリマアプリもありますからね。

ちょっと、リサイクル業はむずかしいかな…と、思っていたところ、ヤフオクで買った1万円のベースを丁寧に磨いて「研磨済み」として出品してみたところ2万円で売れたんです。ギターだったら自分の得意分野だし、「これだ!」と思いました。それが、今やっている事業の原型になったと思います。

とはいっても、最初はメンテナンスの専門的な経験は無かったわけですよね?

最初のころは、インターネット上の情報を調べ尽くしてやっていました。行き詰まったら、池袋のとある工房に持ち込んで、費用をお支払いして、メンテナンス技術を学ばせてもらいました。

いろいろな商品を取り扱っているうちに、自分の得意分野でもあるギターにたどり着いたと?

そうですね。それで、アルバイトしながら、メンテナンスと転売を繰り返して開業資金を貯めまして、おかげさまでオープンにこぎつけました。

ビザールギターの先人たちのように自由にギターを作ってみたい

開業してみて調子はどうですか?本日もお店にお客さんがいらしてますね。

想定よりも需要がありましたね。ありがたいです。と言っても、まだまだ、何かあったら一瞬で潰れるかもしれないですから、気は抜けません(笑)。

ところで、そもそも、なぜ独立起業しようと考えたのですか?

誰かの下で働く、というのが苦手だったんですよ。決定的に働くのが下手(苦笑)。バイトもよくクビになっていましたし。楽しくて、好きだったレコード屋のバイトもクビになってしまい、2、3ヶ月くらいひきこもりました(笑)。これは、自分でお店を立ち上げて、自分のペース、自分のルールで仕事をしないと駄目だろうなと思いました。

そういう状況に共感する人は多いと思いますが、なかなか一歩を踏み出せないのが現実ではないでしょうか。

なんでも試しにやってみる、行動してみればいいと思いますよ。資金が足りなくても、工夫次第でどうにかなりました。たとえば、僕も物件を借りるための予算があまりなかったので、不動産屋を通さず、空き家や空きスペースの大家さんに直接伺ったところ、「若い人に貸したかった」と言ってくれて、快く貸してくれましたし。

大家さんから直接借りることで、コスト削減になった?

はい、不動産さんに相談したら、予算の3倍以上かかると言われていたので。とにかく、とりあえずは、見切り発車でいいんだなと思いました。むしろ知らないままの方が良いこともありますよね。

それにしても、高澤さんの行動力には驚かされます。

単純に、もうあとがなかっただけですが…(苦笑)。体当たりで行動できる点は、ひとつ長所だったのかもしれません。

これからの「Bridge Guitars」で、実現したいことをおしえて下さい。

お店のオリジナルギターを作りたいですね。60年代のブランドギターをもとに、自由な発想でオリジナリティーを形にしていたビザールギターの先人たちのように、僕も自由にギターを作ってみたいです。

一本一本に個性が宿るビザールギターの魅力を知っていただきたい

高澤さんはバンド活動もされていますが、影響を受けたアーティストはいますか?

中学1年のときからブランキー・ジェット・シティーが大好きでした。親も僕を寝かせてからイカ天を見ていたらしくて、家族そろってブランキーが好きだったようです(笑)。

となると、浅井健一さんに憧れてギターをはじめた?

そうなりますね。でも、最初はアコースティックギターでしたけど。それからバンド活動をはじめて、大学進学とともに、プロミュージシャンを目指して、出身の札幌から上京してきました。

現在、バンド活動の方はどうですか?お店との両立もあると思いますが…。

これまで続けていたバンドはお店のスケジュールの都合で辞めてしまいましたが、今年、新たに「lang」と「fox pill cult」という2つのバンドに加入しました。どちらも、その界隈ではすでに知名度があり、すばらしいバンドですが、より多くのひとに知ってもらえるよう、これから頑張っていきたいですね。

高澤さんの持ち前の行動力で、ギターショップもバンド活動も、今後ますます充実していきそうですね。それでは最後に、Bridge Guitarsからメッセージをおねがいします。

ギターといえば、フェンダー、ギブソンが王道ですが、B級、C級と称される「ビザールギター」の魅力、楽器一本一本に宿る個性を知っていただきたいです。店内には防音室も完備していますので、ぜひ一度、試しに弾きにいらしてください。

ビザールギターの魅力に出会えるBridge Guitars、本日は遊び心あるエピソードと、開業に至る貴重なお話をありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2018年10月)

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中野と阿佐ヶ谷のあいだに位置するJR中央線沿線のまち。音楽の街とも呼ばれ、ミュージシャン、役者、芸人、作家志望など地方から夢を追って上京してきた若者が多く住みつき、独特の文化を育んできた。底なし沼のごとく、どんな個性も受け容れるディープ・カルチャー・タウン。
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高円寺四大まつりのひとつ、秋の大文化祭。街じゅうで食、音楽、エンタメ、様々なイベントが同時開催される複合型イベント。中通り商店街ミュージックストリート、各ライブハウスでのFREE WHEELINGなど音楽ライブも「なみじゃない」