e楽器屋.comが取材した楽器店・インタビュー特集(全36回・2015年3月〜2019年12月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

楽器屋探索ディープレポート Vol.21

Guitar Shop Barchie’s

Guitar Shop Barchie’s について
世のベーシストたちが厚い信頼を寄せるベース・エキスパート、千葉俊之氏が2014年7月、大久保にオープンしたベース・ギター専門店。楽器の本質的な魅力を見出し、つねに新しい発見があるプレイヤーのための提案型ショップとして運営。店内には、プロの目利きでセレクトした、心ときめく逸品がならぶ。もちろん誰もが楽器を手に取って試奏が可能だ。プレイヤーの「もう一歩」をサポートする豊富なノウハウ、確かな腕をもつリペア職人によるアフターケアも心強い。
Guitar Shop Barchie’s店舗情報
Guitar Shop Barchie’s公式サイト
新宿区百人町1-23−4 D-SQUARE Shinjuku 6F
お問い合わせ:03-6279-3735
営業時間:11:00〜20:00

楽器店の中の人に話を聞いてみた〜 Guitar Shop Barchie’s 編

このコーナーは、楽器店でミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューしてお話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

Guitar Shop Barchie’s代表 千葉俊之氏

本日は北新宿/大久保のベース専門店「Guitar shop Barchie‘s」代表の千葉俊之さんにお話をお伺いします。お店のオープンはいつ頃でしょうか?

2014年7月にオープンしました。それ以前は2013年まで大手楽器店でベース担当を16、7年やっていました。

ベース一筋ですね。どうしてベースの販売担当になったのですか?

当時、僕の上司が「ベース専門の販売をやりたい」と社内提案したタイミングで、ちょうどそこに僕がいたというだけの話です(笑)。でも、僕が入社した頃は、まだ大手の楽器店に「ベースの専門店」がありませんでした。楽器の性質上、ギター売り場の拡大・縮小に伴って、そのつど右往左往する……、というのがベース売り場の宿命という感じで。

ギターにくらべれば楽器人口が少ないですからね。

はい、それが、90年代の終わりまではごく普通の光景でした。その後、大手楽器店として初の試みとなる「ベース専門店」の立ち上げから関わることになり、入社2年足らずの僕が責任者になりました。それから、ベース販売一筋です。

先日の取材で『日本一ベースを売る男・千葉』の異名を耳にしました。

それは実際どうかわからないですけどね(笑)。「ベース専門店」という形態を模索しながらやってきて、それを同業他社さんが追随して専門フロアを展開する流れになりましたから、ベース専門店としてのビジネスモデル成立を証明した人、という意味ではそうかもしれません。

となるとやはりベース販売の第一人者ですよね。販売実績をあげていくコツなどはあるのですか?

コツというよりは、ベース専門店自体がそれまでなかった存在ですから、ピンポイントの需要があったのだと思います。ずっとマイノリティなわけですから、そういうところにスポットが当たるとお客さんも嬉しいですし、やっと自分のことを照らしてくれるお店ができた、そんな気持ちだと思います。そういった『新鮮な喜び』をなくさないよう、色々と工夫はしてきましたね。

僕にはハイエンドとヴィンテージに「境目」はありません

Barchie‘sの特徴やモットーについて教えてください。

まずベース販売には大きなマーケットが2つあって、ハイエンドモデルを中心とした高級趣向の楽器を扱う店と、ヴィンテージものを中心に扱う店がありますが、現状では、それぞれ取り扱う商品が分離してしまっていることがほとんどです。

同じ高価な楽器を取り扱っているのに分断されているということですか?

はい、ヴィンテージショップには年代物のマーチンや、フェンダーギブソンリッケンバッカーが並んでいますが、ポールリードスミスサー(Suhr)トムアンダーソンなどのハイエンドなものは置いていません。

なるほど。なぜ、そんな風に分かれてしまっているのでしょうか?

ヴィンテージギターといわれているものは、50年代の発売当時は100、200ドルで売っていた量産品も多いわけですよ。そのような楽器でも、現在の最高技術で腕のある職人が作った楽器より高い値段がつくことがある。

そうですね、古くて希少価値があるというだけで高価になっていきます。

この状況は「いい音を追求する」という視点で見ると、どうしても自己矛盾が発生してしまいます。この「自己矛盾」を解決できる人が、業界にはあまり多くない。お客様の方でも、ヴィンテージ派とハイエンドモデル派、それぞれ異なるアイデンティティをもっているため、双方相容れない部分があって(一緒に扱うと)売り場として成立しにくいのです。

Barchie`sでは一つの店内でそれらが共存しているのですね。

はい、僕は楽器を、そういった部分、つまりハイエンドだから、ヴィンテージだからという見方で捉えていないので「自己矛盾」がありません。この矛盾に折り合いをつけて、両方を扱っているショップは世界で見ても非常に少ないと思います。

しかし、お客様の方も趣向がわかれているのですよね?

そのとおりです。ですから、ヴィンテージばかり弾いてこられたお客様にも、お話を聞きながら、最近のモデルの楽器をおすすめすることもありますし、当然その逆もあります。でも、そういう提案が、お客様にとっては新たな発見で、新鮮な出会いがあるかもしれない、そんな提案型のショップをやっています。

真空管とデジタルモデリングも、シームレスにつながっている

こだわりや思い込みに惑わされず、良いものを提案することが千葉さんの基本スタンスなのですね?

そうですね。僕には「境目」の感覚はありません。エレクトロニクスについても同様です。真空管か、最新のデジタルモデリングアンプか、どちらも僕の中ではシームレスにつながっています。いい音を追求するという定義の中ではなんの破綻もなくご説明できます。

アナログのデジタルも『音』という意味では同じですよね。こだわりが良くも悪くも壁を作ってしまうことはあると思います。

僕は、楽器にも統一見解を目指しています。本当にいい音、心地いい音楽、機材ってなんだろう、と常に探していますし、そういう楽器や機材を作っている人たちとのネットワーキングができていますので、このショップではつねに新しい提案ができていると自負しています。

すこし話が戻りますが、Barchie`sとして独立することになった経緯について教えていただけますか?

大手楽器店にいる頃に、こちらのビルのオーナーさんと知り合ったのですが、オーナーさんは、このビルをエンターテインメント系のビルにしたい、という構想があって。上階に音楽スタジオの「Sound Studio Vantage」があるので、相乗効果のあるテナントが欲しいという話をされていたんです。

そういったエンターテイメント性はビルのエントランスからも感じとれますね。

そうですね。そういうきっかけがあったこと、そして大手販売店という売り場では、やりたいことをやりつくした、という感覚があり、新しい挑戦をしたい気持ちが強かったので、独立して自分の店をはじめました。

開業に関しての道のりは、どのようなものだったのでしょうか。

正直に申しますと、楽器の小売店をはじめるには相当な元手が必要です。ある程度在庫を持つにはかなりの金額が必要ですし、大手楽器店であれば、それこそ億単位の在庫をもっています。1フロアーでも2000万、3000万なんてざらですね。資金力がないと勝負の土俵にすら上がれないのが現状です。

どのように楽器店開業の資金調達をされたのですか?

もちろん退職金は全部あてましたけど、そんなのも雀の涙でした(苦笑)。そこで「委託販売」の商品を募ることにしたのです。「お店を作ることになったので、使っていないのがあったら、1、2本委託で出しませんか?」と募りましたところ、あっという間に200本ぐらい集まりまして。

なるほど、委託販売をとりいれたのですね。でも、ベースを愛する方たちの支持あってこそ実現することです。千葉さんの人望の厚さを物語るエピソードだと思います。

おかげさまでオープンの時に良い楽器ばかりでスタートできました。まさにお客様あってのお店となりました。

遠い将来の憧れでもかまいません、リアルを体験して欲しい

それでは最後にBarchie`sからメッセージをお願いします

このお店は、平均で30万円以上の楽器を主に扱っているので、もしかしたらビギナーさん、学生さんは入るのにちょっと勇気がいる、と思われるかもしれませんが、買うか買わないかに関係なく、ぜひお気軽にご来店ください。「リアルに楽器を展示してお店を構えている」からこそ伝えられる、感じられることがたくさんあります。ぜひ直接「体験」して知っていただきたいです。

試しに弾いてみる、というだけでもよいですか?

もちろんです。試奏ができないのなら、ネットショップでいいじゃないですか?でも実際、楽器って手に取ってみないとわからないものです。だから200万円ぐらいの楽器もショーケースなどには入れず、他の楽器同様にぶらさがっています。遠い将来の憧れでもかまいません。まずは、憧れをみつけてみませんか?

楽器との新鮮な出会い、プレイヤーズ・ライフをサポートする貴重なお店だと思います。本日はありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2017年9月)

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