楽器屋探索ディープレポート Vol.14 特別号

阿部豪志氏(有限会社アベインターナショナル代表取締役)
1959年、静岡市に生まれ3才からレコードを触り始める。小学校2年より洋楽を聴きはじめ、小4ではブラスROCKに興味を持ちそれがキッカケとなりROCK、SOUL、FUNK、JAZZ、DISCOを中心に「黒い音」専門となる。同時進行で流行歌、演歌、ムード歌謡、浪曲、浪花節、軍歌、民謡、ハワイアン、GS、ラテン、映画音楽、昭和アニメ曲、も良く聴いていた。15才よりドラムを学び1977年にDJプロデビューするが、1980年からSOUL&FUNKバンドでプロ活動とYAMAHAの音楽イベントで音響技術を習得。1985年〜国内アーティストはもちろん海外の大物アーティストなどの来日時LIVE音響やレコーディングを手掛ける。同時に1982年〜楽器店と貸スタジオを経営、「文化屋楽器店」「阿部楽器」の設立者でも有る。その後1992年よりDJ機材専門店を構築して現在の事業展開となり2002年には、渋谷CISCO店、三越新宿ALTA店、名古屋名駅近鉄Passe店、三越札幌ALTA店、ユニー生活創庫静岡店、とDJ機材専門店としての支店規模は日本一となるが、現在はメイン店舗の渋谷シスコ店のみとなる。純国産レコード針/カートリッジのブランド「樽屋」を設立した人物。樽屋の発売元となる有限会社アベインターナショナルの代表取締役。

阿部豪志氏〜人物紹介〜
『行動が先、その行動が実験だった!』 ステレオやラジオでボリュームとスピーカーを覚える。デパートにあったジュークBOXの音量レベルの場所を探し当て、大音量にして現場を驚かす。小学生の頃、英語が読めなかったが、高音・低音・中域の音を体感してその後、それらが『EQ』なのだと知る。・ドラムを買ったその時から叩けた。PA用ミキサーもEQを可変して音作りが即座に出来た。ドラマーなのでDJのビート合わせがすぐできた。ピアノで自分でみつけたフレーズがブルーススケールだったと後に知る。
樽屋はこうして生まれた!
9歳時から洋楽を聴き始め、14歳でソウルやファンクなどの黒人音楽にハマる。この間、歌謡曲、演歌、軍歌、ラテン、ジャズ、アフリカン、ムード歌謡、民謡、浪花節、浪曲、映画音楽、アニメ音楽、それらすべての音楽を聴いていた。その類まれな音楽情報量と、後のバンドマン(ドラマー)、そしてPA音響技術、これらすべてが合わさり『樽屋』が誕生した。『レコード制作時の音を変えずに、もっと迫力のある音』 、『生演奏(Live)の様なダイナミックレンジ』これが樽屋のポイントだ!
純国産レコード針『樽屋』公式サイト / Disc Jam 渋谷シスコ店 公式サイト
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東京都渋谷区宇田川町11-11 / TEL: 03-3770-6699
営業時間:PM2:00~PM8:45

世界中のDJに愛されるレコード針「樽屋」開発秘話

本日は、人気の純国産レコード針樽屋/老舗DJショップDisc Jamを経営する有限会社アベインターナショナル代表取締役、阿部豪志さんにお話をお伺いします。レコード針樽屋というのはどういったブランドですか?

1997年より、国内で唯一のシャトル型カートリッジ(他社ではコンコルド型ともいう)を取り扱っています。音質に『拘り』を持ち、ダイナミックレンジを追求した迫力ある再生が特徴。もちろん、パーツも生産工場も日本国内という『純国産』にも拘りを持っています。特に国内では、DJのMUROやJAZZ DJの須永辰緒をはじめ、海外ではピート・ロックDJジャジー・ジェフといった超大物達も愛用していることでも有名で、HMVレコードショップでも取扱いを開始したため、一般のレコードリスナーの方にも人気のブランドだよ。

樽屋の名前の由来は?

生産工場の社長(86歳)が樽屋さんと言います。この針を樽屋さんと共に開発し、ブランドオーナーの僕は、お酒が大好きで、樽酒の『樽』に問屋とか屋敷の『屋』は日本ぽいし、「純国産製品だ!」を強調できると考えて命名しました。生産者の名前を使うことにより敬意を表す意味でもあります。よく海外で創業者の名前が屋号になってますよね。

ここにある、赤や白、銀色のカートリッジについて教えて下さい。

『樽屋01-M(赤針)』は、1997年、樽屋ブランド第一号として発売となった製品。『レコードの音を迫力のある生演奏(Live)のようなダイナミックレンジ』で再生! これが赤針です。

『樽屋03-M(白針)』は、アナログレコードでトリッキーなスクラッチプレイをする際に、レコードから針が飛ぶという特性を限界まで無くした針として開発されました。現在ではアナログレコードDJプレイ用針として世界最高峰レベルの位置付けとなっています。

『樽屋FPC-07M(銀針)』は、Serato-DJ/Scratch-LIVEなどのPCソフトDJプレイ時に、高音質でバックキューイング(後回し/逆回転)、バックスピン(高速逆回転)に最適に反応するPCコントロールヴァイナル専用レコード針です。(※アナログ・レコードの再生も出来ます。)

製作・開発に携わる秘話なども教えて下さい。

2009年、あるパーティーでDJ MUROと仲良くなり、翌日、MUROが来社してくれて、彼の針の選定をしてあげました。それは当社のブランドでなく、某ヨーロッパのコンコルド型針でした。当時、MURO君は気に入ってそれを使っていましたが、翌年、「阿部さん、相談があるのですが…」と言ってきた。その内容は、現場でDJプレイ中にL/Rのどちらか片方の音しか出なくなることがある、この時代、ほとんどのDJ達がCDやPCで現場に立つようになり、それに対して、アナログレコードでプレイのMUROの音が半分になってしまう、ということがとてもつらかった。

何が原因だったのでしょう?

何が原因なのか研究・分析していった結果、ターンテーブルのアーム部分とかカートリッジの接続部分に問題があることがわかった。当社(樽屋)のカートリッジでは、その現象が起こりにくい。ヨーロッパのコンコルド型との違いは、アーム接続部分の長さが違っていたところ。当社の針は問題は起きない。しかし、当社の赤針では、音は良いが、MUROのトリッキーなプレイ時に針が飛びやすい。そこで、MUROのために開発を開始。しかし何度やっても、何ケ月経っても、音質を落とさずに飛びにくい針を作ることは出来なかった。それから1年経ったある日のこと、5本の試作品が僕の手元に届き、その中の1本だけが合格だった。すぐさま、工場の樽屋氏に連絡したところ、「同じものを作ることは難しい」と言われた。「なぜですか?」と尋ねると、「あれはまぐれだから…、まぐれをまぐれでなくするようコツコツやるしかない」と返してきた。

「まぐれ」をどのように実現化したのでしょう?

心の中では、僕も樽屋さんも諦めていました。でも口には出さなかった。そしてある日の朝こと、ビルの耐震構造の仕組みと飛びにくい針の動きが似ていると気付いたんです。

降りてきたというやつですね。

2013年3月、50本中10本という確率で製作できるようになった。しかしまだ、それではとても発売できるペースではありません。でも、MUROや他のDJ達を、これ以上待たせるわけにもいかないので、量産ペースにはなっていませんでしたが、雑誌で発表することにしました。そうすることで自分達に発破をかけ、量産ペースを上げるための懸命な努力をしました。

勝負にもでていますね。

2015年の秋、50本中ほぼ合格するという形になりました。当社の針は、工場出荷時までに、出力、波形、音質などの検査を三回ずつ行いますが、針飛びの検査だけは、工場の人員がDJではないため出来ません。なので、僕のところに針が届いてから、針飛びのチェックを僕自身が1本ずつやっています。この僕の検査で、少しでも針飛びした針は全て廃棄処分となります。それは、レコード針は一度作ると再生不可能だからなのです。これが当社の『拘り』です。

“拘り”のある人に“拘り”のある製品を提供したい。

その『拘り』、敬意の念を抱かずにはいられません

それを、たまたま知っているユーザーの皆様は、よりファンになって頂いております。PCのこの時代、アナログレコードで音楽を再生すること自体が『拘り』だと思うので、『拘り』のある人達には、『拘り』のある製品を提供したい。これが趣味の原点であると思います。だって、簡単に山登りが出来てしまったら、趣味としておもしろくないですよね(笑)?

赤針、白針、共に壮絶な開発だったのですね。やはり銀針も相当な経緯が?

『樽屋PC-07M(銀針)』は、2013の秋より03-M(白針)が量産体制となり安心していた矢先、Serato-DJ/Scratch=LIVEでDJプレイする最に当社を含めたほとんどのメーカーのレコード針だと「逆回転」の際に、PCソフト画面上で空回りすることが判明した。この現象は普通のMixプレーやスクラッチプレーでは、ほとんど問題とは成りませんが、バトルDJスタイルの「2枚使いプレー」時に問題と成ります。これは、白針の完成を心待ちにしていたアナログレコードDJ達以外の、PCコントロールレコードを使用する大物DJから指摘された。ここでまた壁にぶつかったのです。即座に工場の樽屋氏に相談したら、『そんなの知らないよ!そもそもレコードは良い音でかかればいいんでしょ!?』と言われました。

真理ですが、厳しい状況ですね(苦笑)。

その時点で83歳の樽屋氏には、PCでDJなんてわかる術もない。その仕組みを説明し理解していただくのにとても苦労しました。どんな家庭でも、若い人にとっては、当たり前のハイテク技術でも高齢者に理解させる事はとても困難ですよね(笑)? ただ、樽屋氏は、「他の一美の製品ではその現象が起きないのに、当社の針だと(その現象が)起きると指摘されたことが癪にさわる!」ってことで、樽屋氏の職人気質が炸裂した。

やはり壁を乗り越えていく人達だ。

そしてもう一つの問題は、『FUCK PC』という看板まで出している当社の僕は、当然、PCコントロールなど使ったことも見たこともなかった。Scratch-LIVEは沢山販売していたけど(笑)。それで僕は、Serato-DJを使用する内外のトップDJより使い方を学び、共にその盲点も調べた。この時お世話になったDJ SARASA、J・ピリオド、DJジャジー・ジェフには心から感謝しております。しかし、この針の開発手段とテストを当社の店舗は行えない(FUCK PCと謳っているから)。なので、工場にSerato-DJを使用できるよう機材を導入し、そのチェックの仕方ややり方を工場の人に説明し、なんとか製品を発売できた。

尋常ならぬ情熱が伝わってきます。

樽屋レコード針01-M(赤針)、03-M(白針)、FPC-07M(銀針)、共に、前述までに説明した開発秘話により発売となったことで開発は終わりではなく、僕たちは“終始、『お客様にはわからない程度のペースで、全ての商品のグレードアップをしています!』

FPC-07M銀針の実力

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